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支給割合に、最大で6倍の格差が!障害年金が抱える問題とは。

2016/02/20

支給割合に、最大で6倍の格差が!障害年金が抱える問題とは。 - 社会保険労務士法人アールワン | 東京都千代田区

こんにちは、東京都千代田区の社会保険労務士法人アールワンの高澤(たかさわ)です。

2016年1月27日に、「地域格差を解消するために、障害基礎年金の審査体制が2017年から新組織で一元化される」という報道がありました。しかし、このようなニュースを見ても、そもそも「障害年金とは?」「地域格差とは?」という方も多いのではないでしょうか。

そこで今回は、このニュースの背景についてお伝えいたします。

 

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そもそも「障害年金」とは

「年金」というと、一定の年齢に達すると支給される老齢年金がまずイメージされると思います。しかし、そのほかにも、亡くなった時に遺族に支給される遺族年金、ケガや病気(うつ病などの精神障害も含む)をして障害状態になった時に支給される障害年金があります。

また、障害年金にも2種類あり、

*初診日に厚生年金に加入していた人 → 障害厚生年金の対象者

*自営業者や、厚生年金加入者の被扶養配偶者など国民年金に加入していた人 → 障害基礎年金の対象者

となり、それぞれの受給額などは異なります。

 

障害年金の審査機関の違い

そして、障害厚生年金と障害基礎年金では、審査機関に違いがあります。

障害厚生年金は日本年金機構本部が一括で行なっているのに対して、障害基礎年金は各都道府県の日本年金機構事務センターが都道府県単位で行なっています。

そのため障害基礎年金においては、同じような障害の状態に関わらず、請求する都道府県によって審査が通りやすい、通りにくいという格差が生じているのではないかと言われていました。そのような声を受けて、都道府県ごとの障害基礎年金の「不支給割合」が開示されたのですが、その結果は驚きのものでした・・・。

 

都道府県ごとの地域格差とは

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請求しても「不支給」と決定された割合を都道府県ごとに比較すると、最も高い県は大分県で24.4%(約4人に1人が不支給)、最も低い県は栃木県で4.0%(約25人に1人が不支給)と、なんと約6倍の地域差があることが判明したのです。

 

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そして、不支給割合の高い県の特徴としては、「精神障害・知的障害」に対する不支給率が高いという傾向がありました。つまり、明確な基準を定めにくい精神障害・知的障害に対する、各都道府県のいわば、さじ加減の違いが、地域格差の大きな要因であることがはっきりと表れているのです。

 

これで地域格差は解消できるのか?

そして、この地域格差を解消するための一つの方策として挙げられたのが、「障害基礎年金の審査体制を一元化する」というもので、それが冒頭でご紹介した報道につながっていきます。

しかし、実はこの報道には誤解があります。それは、この体制の本来の趣旨は「地域格差の解消」ではなかったということです。

これはもともと、情報流出問題が起きた日本年金機構が提出した業務改善計画が元となっています。その計画の中の一部である「組織の一体化」という項目に、なぜか「地域格差解消のため」という枕詞がついて、そのまま誤ったニュアンスで報じられてしまったのです。つまり、地域格差解消の解決策として提示されたわけではないということです・・・。

 

居住している都道府県によって、障害基礎年金の給付が大きく左右されてしまうということは、人の一生に関わる非常に大きな問題です。それにも関わらず、国の情報開示や対応の遅さ、報道機関の軽率な誤りや他人事感には疑問を禁じえません。

そのような経緯による審査体制の一元化が、結果として地域格差の解消に資するのか?この件については、今後も厚生労働省や日本年金機構の動き、それを受けての報道へも目を向けていきたいと思っています。

 

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高澤 留美子(たかさわるみこ)のイメージ

執筆者

社会保険労務士法人アールワン 高澤 留美子(たかさわるみこ)
社会保険労務士事務所を開設して、歳月がたちました。最初の事務所は自宅の子ども部屋でした。お客様と本音でつながっている「パートナー」になれるよう、日々研鑽しています。モットーは「人間万事塞翁が馬」です。