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定額残業代を導入するリスクと、本当のメリットは何でしょうか?

定額残業代を導入するリスクと、本当のメリットは何でしょうか? - 社会保険労務士事務所オフィスアールワン | 東京都千代田区

こんにちは。社会保険労務士事務所オフィスアールワンの長谷川(はせがわ)です。最近の楽しみは、ビールの懸賞で当たった「黄金のタンブラー」で晩酌をすることです!

さて、今回のテーマは「定額残業代」です。

現在のところ、残業手当の支給方法として「定額残業代制」は一般的なものとなっており、これから採用する予定の企業も多いことでしょう。

しかし、つい先日には「ハローワークへの調査を行った結果、定額残業代を謳った9割近くの求人に、違法又はその疑いのある記載が認められた」というニュースが出たことからも、誤った認識を持ったまま運用している企業も多いようです。特に大きな誤解は「残業代を、時間外労働の実態に関わらず一定金額に抑えられる」というものではないでしょうか。

今回はそのような現状を踏まえ、定額残業代制を採用するにあたっての注意点と、より効果的に運用するためのポイントをお伝えします。

 

定額残業代制のリスクは?

まず、「毎月定額の残業代を支給する」という制度を採用するリスクはどのようなものでしょうか?

それは、会社が設定していた定額残業代が法的に認められずに、後から「無効」とされるケースです。

その場合、定額残業代(として支給していた部分)は残業代とはみなされず、(残業代は未払として)会社には別途で残業代の支払い義務が発生します。

例)
Aさんは月額30万円支給(うち5万円が定額残業代) ・・・実際にAさんは月「10時間」残業
>>定額残業代は、「25万円」(基本給)をベースに時間単価を算出

その後、何らかの理由で定額残業代が「無効」とみなされてしまう

30万円の支給とは別途で「10時間」の残業代の支払い義務が会社に発生!
>>その場合の残業代は、「30万円」をベースに時間単価を算出(5万円も基本支給部分に組み込まれるため)

 

上記で見られるように、無効とされてしまった場合の企業の負担は重たいものです。それでは、いったいどのようなケースで無効とされてしまうのでしょうか?

 

定額残業代が認められるためには?

基本給の一部、または手当が「定額残業代」として認められるための要件として、以下3つを押さえておく必要があります。

①定額残業代が、他の賃金と明確に区別されていること

NG例)「職務手当の一部に定額残業代を含む」(区別されていない)

②定額残業代の金額及び、何時間分の割増賃金を含むかを明示すること

NG例)「基本給30万円に、1か月20時間分の残業代を含む」(金額が不明)

③時間外労働割増賃金の額が、定額残業代を上回った場合には「差額を支給する」旨を明示すること

 

以上のポイントのいずれかが抜けているという企業は多く、その場合には定額残業代が認められず、別途の残業代支払義務が発生する可能性があります。制度運用で漏れが無いか、改めてご確認ください。

 

定額残業代に「月45時間」超を設定するリスク

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また、上記の要件とは別に、トラブルを回避するため以下の点に注意が必要です。

それは「月45時間を超える時間外労働に対する定額残業代制」です。

月45時間を超える時間外労働を義務付けることは、「三六協定による時間外労働の限度に関する基準」の趣旨に反するとされています。しかし、実はこの基準に強制力はありません。そのため極端な話をすれば、「月90時間」で設計することも可能です。

しかし、定額残業代制に長時間の残業時間を設定して運用がされた結果、従業員が業務上の病気や怪我などを負ってしまった場合には、安全配慮義務違反に基づいた損害賠償責任を問われる可能性もあります。

この場合、定額で設定された時間分の時間外労働をすることは、本来は従業員の義務ではありません。しかし、そのような制度設計をしている以上は、長時間労働が常態化した環境であるとみなされ、企業が責任を免れることは難しいといえます。

そのため、定額残業代制は月45時間以内での設計が望ましいでしょう。

 

定額残業代制の目的とは?

ここまではリスクや注意点を見てきましたが、最後に「会社が定額残業代制を採用する目的」について考えてみたいと思います。

よく見受けられるのは「残業代の削減」「事務作業の負担軽減」を目的として挙げるケースです。

しかし、前述したように、定額残業代を超える労働をした場合には、通常通りの割増賃金の支給が必要です。そして、そのためには毎月の残業時間の管理も必要です。つまり、単純に定額残業代制を採用するだけでは、そういった効果は全くないといっていいでしょう。

では、本来の目的は何でしょうか?

会社としての残業時間の規定は、残業代込みで人件費を予算化する事ができ、従業員に時間意識を持たせ、仕事の能率を上げる事につながります。つまり、「従業員の労務環境の整備」こそが、その目的であるべきではないでしょうか。

その成果を出すためには、まず現在の業務量を把握し、会社の各部門において「規定時間の範囲内で業務を回す仕組み」を構築していくことが求められます。その取り組みに従業員が主体的に参加していくことによって、あくまで「副次的な効果」として残業代の削減も実現していくことでしょう。

定額残業代制をただ導入するだけではなく、導入してから業務効率化を図っていくプロセスのほうを重視することで、企業と従業員の双方にとって最適な労務環境をぜひ模索してみてください。

 

長谷川 靖二郎(はせがわせいじろう)のイメージ

執筆者

社会保険労務士事務所オフィスアールワン 長谷川 靖二郎(はせがわせいじろう)
大学の法学部を卒業後、法律事務所やキャリアコンサルタントなどの業種を経験。「法律」と「人」に対する強い興味が現職のモチベーションです。 人材業界の経験から、会社にとって「人」がどれだけ重要であるかを痛感しており、特に採用関連のトピックは色々とご相談に応じられます。 「自分が変われば周りも変わる」がモットー。お酒が好きで何でも飲みます。

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