社労士認証制度から見えてきた労務管理の落とし穴(前編)
2022/10/20

こんにちは。東京都の社会保険労務士法人アールワンの濵中(はまなか)です。1月に久しぶりにハーフマラソンを走ることになり、そろそろ怠けていた身体にムチを入れて練習しなければと思っている今日この頃です。
2022年8月10日のブログでお伝えした「社労士認証制度」ですが、その後複数の企業においてチェックリストに基づいて労務診断を行った結果、特定の項目をクリアできていないことが多いことがわかってきました。そこで今回はそれらの項目について2回に分けてお伝えします。
落とし穴①「雇入れ時の健康診断の未実施」
労働安全衛生規則第43条において、企業は常時雇用する労働者を雇い入れる時には法定項目について健康診断を実施する必要があります。これがいわゆる「雇入れ時健康診断」です。多くの企業において、年に1回行う定期健康は実施していますが、この雇入れ時健康診断を行っていないケースが見受けられました。
対応方法として、入社前に法定項目について健康診断を受けてきてもらい、その結果を提出してもらうことが考えられます。法律では「3ヶ月以内」に受けた健康診断の結果の提出があった場合、雇入れ時健康診断を省略することができるようになっています。そのため、採用内定を出した段階で健康診断を受けてもらい、その結果を提出してもらいます。その際、根拠として就業規則の入社時の提出書類に「健康診断結果」を追加しておく必要があります。
落とし穴②「契約社員の雇用契約書の不備」
パートタイム・有期契約労働法において、契約社員やパートタイマーの方と雇用契約を締結する際に次の事項について明示をすることが義務付けられています。「昇給の有無」「退職手当の有無」「賞与の有無」「短時間・有期雇用労働者の雇用管理の改善等に関する事項に係る相談窓口」このうち「雇用改善の相談窓口」について雇用契約書に記載されていないケースが多く見受けられました。これは平成27年に法律改正が行われ、追加された事項のため記載漏れが多くなっていると思われます。
相談窓口は、部署でも、相談担当者(個人)でもよいとされています。相談窓口は相談者から苦情を含めた相談があった場合には適正に対応する必要があります。昨今、同一労働同一賃金の問題もあり、契約社員やパートタイマーの労務トラブルが増えているため、それを未然に防ぐという意味でも記載をしておく必要があります。
今回は社労士認証制度の中で特に指摘事項が多いポイントを2点お伝えしました。社労士認証制度において「経営労務診断適合企業」を目指す場合には全ての項目においてクリアをする必要があります。また、どちらも労働基準監督署の調査において確認されるポイントになるため、未対応の場合には対応方法を検討する必要があります。次回の後編では更なる指摘ポイントについてお伝えします。

社会保険労務士法人アールワン 濵中 伸介(はまなかしんすけ)
「四角い法律を丸く」 そんな想いで、社会保険労務士として日々、企業とそこで働く人たちの“ちょうどよい”を探しています。法律は「正しい」けれど、現場には「現実」がある。その間に立ち、経営者と従業員がともに前を向ける関係性づくりを大切にしています。趣味はランニングとMr.Children、そして何より、お酒を片手に語らうこと。仕事の話でも、人生の話でも、お気軽にお声がけください。“ひと息つける社労士”として、あなたに寄り添えたら嬉しいです。
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