アールワン日誌 Blog

中小事業主は「労災保険の特別加入制度」と「民間保険」のどちらに加入するべきでしょうか?

2017/06/30

中小事業主は「労災保険の特別加入制度」と「民間保険」のどちらに加入するべきでしょうか? - 社会保険労務士法人アールワン | 東京都千代田区

こんにちは。東京都千代田区の社会保険労務士法人アールワンの濵中(はまなか)です。

さて、先日の話です。スタッフの親戚の会社が社労士事務所との契約が切れるとのことで「労災保険の特別加入制度をどうすればよいのか?」という相談を受けたそうです。

この特別加入制度というのは、通常は従業員だけが対象となる労災保険に、一定の要件を満たせば中小事業主なども加入させることができる制度です。代表取締役や役員としての仕事をする一方で、従業員と同じように現場で仕事を行っている方が、万が一のときに備えて利用することができます。

ただし、この特別加入をするためには「労働保険事務組合に事務委託をするか」「社会保険労務士を通じて労働保険事務組合に加入する」という必要があります。その会社は、現在委託している社会保険労務士との契約が切れるため、そのままでは特別加入制度を継続して利用できなくなるという問題に直面していました。

しかし、その際に考えられるのは「労災保険の特別加入制度ではなく、民間の傷害保険に入った方がよいのではないか?」ということです。

 

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「特別加入制度」の利用で注意すべき点は?

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というのも、この中小事業主の特別加入制度は、いざというときに保険給付が行われるまでにはいくつかの注意点があるのです。実際に「特別加入をしている代表取締役が勤務中にケガをしたにもかかわらず、保険給付が行われなかった」というケースは決して珍しいことではありません。

 

注意点1 「労働者として仕事をしている場合にのみ、給付が受けられる」

「事業主として」仕事を行っていたという場合には、補償の対象になりません。たとえば、役員会や株主総会、接待などの時間にケガをしても保険の給付は行われません。

 

注意点2 「申請書に記載した業務内容、業務時間内のみが、給付の対象となる」

特別加入をする際には、あらかじめ提出する申請書に業務の内容と時間について申請を行います。その後、実際にケガをした際に、その原因となる業務がそもそも申請書に記載されていなければ保険は給付されません。

 

注意点3 「夜間や休日に一人で仕事をしていた場合、給付が受けられない」

時間外労働や休日労働については「ケガをした際に他の労働者がその場に一緒にいた」ということが給付の条件になります。休日に社長が一人で仕事をしていたという場合など、ケガをしても給付は出ません。

 

このように、中小事業主等の特別加入で実際に保険給付を受け取るには、満たすべき条件がいくつかあるのですが、スタッフの親戚の会社はその点をしっかり認識していないまま、加入していたそうです。

 

「民間保険」に加入した場合のメリットは?

さて、そこで特別加入制度のかわりとなるのが、民間保険です。

民間保険にも事業主や役員を対象とした傷害保険がありますし「業務内容が事業主としてか、労働者として行っていたか」などを問わず、保険の給付が行われます。万が一のときの備えとして加入しておくなら、民間保険の方が補償の範囲は広くなるといえます。

また申請から2~3日で給付が行われるなど、給付までの期間が短い点も利点といえます。(労災保険の場合は、振り込されるまでに1ヶ月近くかかることがあります)

 

そして「特別加入制度」と「民間保険」の保険料を比べてみると、

特別加入制度では、

「給付基礎日額※」✕ 365日✕ 保険料率(会社の業種によって変動)
※3,500円~25,000円で任意に設定 

で保険料が算出されます。

 

たとえば、給付基礎日額を14,000円で設定し、会社の保険料率が3/1,000の場合には次のようになります。

14,000円 ✕ 365日✕ (3/1,000)=15,330円(年間保険料)・・・1月あたり1,278円
※労働保険事務組合の会費が別途かかります。

 

これに比べると、民間保険は、会社や補償内容によって違いはあるものの、一般的には特別加入制度よりも保険料が高くなる傾向にあります。

 

このように特別加入制度は、一般的には保険料が安くなるといった利点が挙げられます。しかし、スタッフの親戚の会社は「その他の条件も加味すると、民間保険が高いとは感じられない」とのことで、保険事務組合への委託や新しい社労士事務所との契約ではなく、民間保険に加入することを検討しているそうです。

労災保険の特別加入制度にすでに加入している、もしくは検討をしているという会社の方も、この特別加入制度の注意点を確認したうえで、ぜひ今後について検討してみてください。

国が主体で行っている社会保険と民間の保険、そのどちらかがよいと決めつけることなく、それぞれの内容をしっかりと理解したうえで選択していかなければならないと、私も今回の一件で改めて感じることができました。

 

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濵中 伸介(はまなかしんすけ)のイメージ

執筆者

社会保険労務士法人アールワン 濵中 伸介(はまなかしんすけ)
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