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法制度を文面だけで理解していませんか?そこで求められる専門家の役割とは。

2018/11/30

法制度を文面だけで理解していませんか?そこで求められる専門家の役割とは。 - 社会保険労務士法人アールワン | 東京都千代田区

こんにちは。東京都の社会保険労務士法人アールワンの濵中(はまなか)です。フルマラソンの大会まで残された時間があとわずかとなり、4時間のタイムを切るための最後の悪あがきに週末を費やしている今日この頃です・・・!

私たち社会保険労務士が扱う法律や社会保障制度は、頻繁に改正(変更)が行われます。例えば育児・介護休業法については、2017年だけで2回も改正がありました。では、そもそも法律や制度の改正が行われるのはなぜでしょうか?「より時代に合った内容にするため」というのは当然のことですが、そこには必ず「こういう方向性にしたい」という国の思惑があります。

今回のテーマは、そのような場面で求められる社会保険労務士の役割についてお伝えします。

 

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改正の内容以上に、その意図を理解すること。

法改正に国の意図がある以上は、それにうまく対応するためには「この改正の背景にはどのような思惑があるのだろうか」をいち早く掴んでいくことがポイントになります。

例えば、助成金制度でいうと2018年現在の助成金におけるキーワードは「育児休業」と「生産性の向上」です。どちらも国が強烈に進めている「働き方改革」に関連しています。育児休業については、男性が育児休業を取得する場合や、育児休業に入る従業員について「育休復帰支援プラン」を作成する場合などが助成金の対象になります。これらには、今後の労働力人口の減少を少しでも食い止めたいという国の意図があります。

また、生産性の向上については、そのための設備導入費用の一部補助や助成金額の上乗せなどがあります。これも、今と同じ従業員数でより多くの付加価値を生み出すことのできる企業活動が求められているということです。

このような、国が進める方向にうまく乗ることができれば、会社としてはより多くの助成金の対象となることができます。しかし、このような制度変更は頻繁に行われており、その情報をキャッチするだけでも大変です。助成金で言えば、年度ごとに予算が決まっているために「受給できる!」と思った時にはすでに終了しているケースもあります。そのようなことがないように、その会社にあった情報をタイムリーにお伝えしていくことが私たちの役目だと考えています。

 

制度を一面的に見ていると、落とし穴も。

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制度変更の背景には国の意図がありますので、うまくそれを活用することができればメリットはあります。しかし、逆に注意が必要な場面もあります。例えば「配偶者控除の適用拡大」についてです。

今までアルバイト収入が年間103万円までであれば配偶者控除の対象となっていましたが、2018年1月からはこれが年間150万円までに拡大されました。そこには「これまで扶養の範囲を気にして働く時間を制限していた人に、もっとたくさん働いてほしい」という意図があります。

では、実際にこの意図のとおりに年間150万円まで働いてしまうとどうなるのでしょうか?実は、もうひとつの重要な基準となる「社会保険の扶養」の範囲は年間130万円から変更されていないため、社会保険に新たに自分で加入しなければならないケースが出てきます。その場合には150万円まで働いても、なんと手取り額が103万円のときと大差ないという事態が発生してしまうのです・・・。(制度変更について、各省庁を横断して一元的に考えられていないためにこのような事態が起きてしまいます)

 

社会保険労務士に求められる役割とは。

このように、制度変更の一面だけを見ていると、他の制度に落とし穴があることは他にもよくあります。このような落とし穴を避けるためには、周辺知識や今までの経験を活用しながら、どのような選択がベストかを判断していく必要があります。そして、それこそが私たち社会保険労務士の仕事だと考えています。

たとえば前述の配偶者控除について言えば「では実際にいくら以上の収入を得ることができれば、社会保険に加入したとしても家計としての手取りが増えるのか」といったことを、ご本人の希望や会社の状況も勘案したうえで個別に試算してお伝えするようにしています。

 

来たるAI時代の到来により、士業は消えゆく職業候補の上位にいつもランクインしています。たしかに、法律改正の内容の把握やそれについての形式的な対応についてはおそらくAIでも可能でしょう。しかし、現実の場面においては会社や人によってさまざまに異なる状況があり、そもそも唯一の正解が存在しないというケースさえあります。そのような状況において、私たちが今まで培ってきた知識や経験は、これまでと変わらず求められるはずです。AIに飲み込まれてしまうのではなく、今までの私たちの経験とAIの技術をうまく活用することで、今後もお客様に必要とされるサービスを提供していきたいと考えています。

 

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濵中 伸介(はまなかしんすけ)のイメージ

執筆者

社会保険労務士法人アールワン 濵中 伸介(はまなかしんすけ)
代表就任3年目。私たちに係わる全ての人が成長・発展することによって、よりたくさんの人の「働く幸せ」を創造できるように日々奮闘しています。趣味はランニングとミスチル、それとお酒を飲みながら人と会話をすることです。みなさん、よろしければお声掛けください。