アールワン日誌 Blog

監督署や年金事務所の調査は、会社にとってマイナスの影響だけではないはずです。

2017/04/30

監督署や年金事務所の調査は、会社にとってマイナスの影響だけではないはずです。 - 社会保険労務士法人アールワン | 東京都千代田区

こんにちは。東京都の社会保険労務士法人アールワンの高澤(たかさわ)です。最近、小さな子どもと遊んでいてアンパンマンのテーマ曲を歌うと、なぜか何度でも泣けてしまいます。いったいこの曲の歌詞には何が入っているのでしょうか・・・。

ここ近年、企業に労働基準監督署や年金事務所の調査が入ることは決して珍しいことではなく、当事務所の顧問契約先企業もその例外ではありません。(ちなみに、先日も某年金事務所に調査の書類を持参した際には、担当の方が「今年度は飲食業を重点的にやることになっているんです」と言っていました)

さて「調査」という言葉を苦々しく感じられる経営者のかたも当然多いかと思いますが、今回はそんな監督署の調査にまつわる私のエピソードをご紹介します。

 

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労働基準監督署の調査で、てんてこまいに。

それは、私が社会保険労務士として独立して3年目の話です。たいした経験もなく「調査といえば、税務調査しかわかりません」という状態でした。そんなときに、お客様の会社が労働基準監督署の調査にあたってしまったのです(!)。

監督署に指示された書類を準備し、ヒアリングも受けた結果、最終的には会社に是正勧告書が出されました。その内容は「雇入れ時に労働条件を明示していない」「10人以上いるのに就業規則を届出していない」そして「過去3ヶ月にさかのぼって未払いの時間外手当を払うべし」というものでした。

労働条件の明示と就業規則の届出はすぐにでもできることですが、さかのぼった3ヶ月間の時間外手当の支払いはどうしよう・・・と、お客様の会社の社長といっしょに考え込んでしまいました。

そもそも賃金支払いの時効は2年間なのに、なぜ3ヶ月だけなのでしょう?(もちろん、それを言って2年となっては困るので言いませんが)さらに、従業員の人たちは誰も払えと言っていないのに、どんな理由をつけて支払うべきか?払うことで、逆に従業員を刺激してしまうのでは?そもそも支払うためのお金がない・・・などなど、対応の糸口がなかなか見えません。

 

調査が、会社がかわるきっかけに?

そこで、いったんは是正できたところから報告をすることとし、2つの項目(労働条件と就業規則)について是正報告書を作成しました。それを監督署まで提出に行ったのですが、そのときに監督官が何気なく言われたことを、私は20年近く経った今でも鮮明に覚えています。

「中小企業が、労働環境を変えるきっかけって、なかなかないですよね。自分たちが調査に行くことがそのきっかけとなって、その会社が少しでも良くなってくれればいいなと思っているんですよ」

その言葉には、「特別なことを言ってあげている」という高圧さや気負いなどはなく、その人がご自分の仕事にどんな姿勢で取り組んでいるのか、ということだけが素直に伝わってきました。そのため、そのときの私は「ああそういうことなのか」とストンと腹におちた気がしたのです。

 

未払いを支払うことなく調査は終了に。

その言葉の影響もあったのかもしれません。そのあと私は社長に

「3ヶ月分の未払いをどうするかは後にして、まずはこれから未払いが少しでも出ないように、労働時間の短縮に取組むことにしましょう」

とお伝えしました。そして、社員の皆さんにもストレートに今の状況を説明したうえで、労働時間短縮のアイデアを出してもらったのです。

そして監督署にはその議事録と、その対策後の労働時間の記録(時間短縮は微減でしたが・・・)を添付した是正報告書を提出したところ、3ヶ月分の未払いを支払うことなく調査は終了となりました。

 

さて、それからの年月で私も経験を積み、今では「労働基準監督署の調査は、あくまでも行政指導(※)であること」「監督官には賃金支払を命令する権利がないこと」などを知識として得ました。

※行政指導とは、つまり法令による強制手段ではなく、会社が自発的に是正することを期待した改善のための指導です。

でも、だからこそ、あのときの監督官がおっしゃったことこそが、監督署の調査の本質を最大限わかりやすく表していて、その目的が「納得」できる貴重なものだったと今でも思っています。それ以来、調査がはいる場面では「これを機に、会社が将来に向けて改善できることはなにか、取り組めることはなにか」ということを念頭に置いて取り組んでいます。

 

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高澤 留美子(たかさわるみこ)のイメージ

執筆者

社会保険労務士法人アールワン 高澤 留美子(たかさわるみこ)
社会保険労務士事務所を開設して、歳月がたちました。最初の事務所は自宅の子ども部屋でした。お客様と本音でつながっている「パートナー」になれるよう、日々研鑽しています。モットーは「人間万事塞翁が馬」です。