アールワン日誌 Blog

オフィスの安全管理も慎重に。些細な怪我が、大きな労災事故になることも!

2017/11/30

オフィスの安全管理も慎重に。些細な怪我が、大きな労災事故になることも! - 社会保険労務士法人アールワン | 東京都千代田区

こんにちは。東京都の社会保険労務士法人アールワンの黒木(くろき)です。最近はぐっと寒くなったため、自宅のファンヒーターの前を猫と取り合いする毎日です。(たいがい私が負けます)

会社での業務中におきる労災事故といえば、製造業や建設業、飲食業などで多く発生するもので、「オフィス勤務の人はめったに労災事故につながるようなことはない」と考えられがちです。そのためか、怪我をすることがあってもたいしたことはないと考えて病院へ行かなかったり、行ったとしても本人負担の診療費を会社が支払うだけで労災の申請を行わない場合もあるようです。

しかし、労災事故が起こったことをきちんと届出しなければ「労災かくし」を疑われ、起訴されるリスクもあります。そして、オフィスで起きた怪我は大事にはなりにくい、というのも果たして本当でしょうか?

そこで今回は、実際に私が経験した「オフィスでの怪我が大きな事件となったケース」をご紹介します。

 

企業の経営者・担当者さま

「もっと詳しく知りたい」「今この件で困っている」そのようなときには、こちらよりご連絡ください。

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「ファイリングをしていて、手首をひねった」だけのはずが。

少し前の話になりますが、私が担当させていただいている会社のオフィスで「怪我をした人がいる」との連絡が入りました。

すぐに対応するために、具体的にどのような事故だったのか聞き取りをしたところ

『ファイリングの業務をしていて、書庫に大きなパイプファイルをしまう際に左手首をひねってしまった』

というものでした。事故にあわれた社員の方は、痛みがとれないので、念のために病院へ行くとのことです。

そのときの私は、労災事故として処理するために病院へ「様式第5号(療養補償給付たる療養の給付請求書)」を提出し、会社内でそのファイルの扱い方の注意(今後はできるだけ片手で持たない)を周知してもらえば、この件は一件落着すると思っておりました。

数日後、その怪我をされた社員の方がまだ会社を休んでいるとの連絡が入りました。その時点でも私にはまだそんなに大変な事故だという認識がありませんでした。しかし、このお休みはそれから1年半以上も続いたのです。

 

労災保険料が年間200万円アップすることに。

お休みされている期間は、「休業補償給付」の支給請求を続けました。病院へ通院するための交通費(移送費)も数ヶ月ごとに請求しました。治療しても痛みがなかなかとれないということで、精密検査をし、手術まで行われました。しかし、それでもしびれ・引きつりなどの後遺症が残ってしまったのです。その後には障害補償給付支給請求を行い、障害等級14級にも認定され、障害補償一時金が支給されることになりました。

怪我をされた社員の方については、この障害補償一時金という形で一段落となったものの、その後に会社はその労災事故の発生を理由に労働保険料の「メリット制」(※)が適用されなくなりました。それまでは「マイナス40%」が適用されていたのですが、通常の労災保険料率となった結果として、労災保険料が今までより年間200万円ほど高くなったのです。

※メリット制とは、その事業所の労働災害の多寡に応じて、一定の範囲内(基本±40%)で労災保険料率または労災保険料額が増減される制度です。

 

きっかけは些細な不注意で起こった事故であるものの、その社員が休んでいる間の代替社員の雇い入れや、労災保険料の負担が増えるなど、会社にとっては想像を超える費用が発生する結果となってしまいました。しかし、労災の申請を正しく行った結果ですので、これはやむを得ません。これをきっかけに、その会社では災害防止に一層力をいれているそうで、このエピソードも語り継がれているそうです。

未然に事故を防止する取り組みとしては、たとえば日ごろからオフィス内につまずいてしまいそうなものを設置していないか、カーペットがめくれていないか、不安定な動作をしがちな作業がないか、などの確認が考えられます。いずれも、気がついたらすぐに対応や声かけが必要です。

また特定の部署や担当者だけではなく、社員全員に危険に対する気づきを促していく安全衛生教育を行うことも大切です。社内に「安全衛生委員会」を設置し、そこで決定したことを社員へ周知していくといった取り組みもぜひご検討ください。

 

企業の経営者・担当者さま

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黒木 知子(くろきともこ)のイメージ

執筆者

社会保険労務士法人アールワン 黒木 知子(くろきともこ)
日ごろから社会保険の手続き業務が数多く発生するお客様を担当させていただき、これまで実にさまざまな手続きに携わってきました。そこで常に痛感しているのは、事前の準備とお客様へのご案内の大切さです。プライベートでは飼い猫に癒されながら、日々の活力を養っています。