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漏れていませんか?義務ではないものの、就業規則に必ずいれておくべき条項。

2019/03/10

漏れていませんか?義務ではないものの、就業規則に必ずいれておくべき条項。 - 社会保険労務士法人アールワン | 東京都千代田区

こんにちは。東京都の社会保険労務士法人アールワンの高澤(たかさわ)です。先日、人生初のソプラノ歌手のコンサートに出かけました。マイクを使っていないのに会場の空間に満ち満ちる声!ひたすら圧倒されて、ぼーっとしながら家路につきました。

会社における就業規則は、そのほとんどが労働基準法(以下、労基法)に基づいた内容で構成されています。しかし、実は重要なのが「労基法に規定義務はないものの、その規定があることで会社を護ることができる」という条項です。その肝心の部分はボリュームにすれば全体の2割程度ですが、それによって会社で起きる問題の8割に対応できるといえるほどです。

そこで今回の記事では、そのポイントの一部をお伝えいたします。

 

企業の経営者・担当者さま

「もっと詳しく知りたい」「今この件で困っている」そのようなときには、こちらよりご連絡ください。

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1.休職制度の定め

休職とは、労働者が私傷病(業務外での怪我や病気)等により労務に従事できない、または従事すべきではない場合に使用者(会社)が働くことを免除または禁止することです。私傷病時の休職については、次に該当する内容を必ず規定してください。

□試用期間中の人は対象外とする。
□復職は、私傷病が治癒した場合にのみ認める。条件付きの復職(週3日なら可、など)は認めない。
□復職の判断において、医師の診断書は判断材料の一つであり、判断者は常に会社である。

また、休職期間満了により退職する場合は、定年と同様に「就業規則に定めのある時期が到来したこと」による雇用契約の終了となります(自然退職)。そのため、本人に対して退職届の提出を求めることは行わないでください。退職届を求めると、本人は退職を強要された(解雇)と考え、まれに争いに発展するケースもあります。

 

2.服務規律

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服務規律は、労働者が労働義務を履行するにあたって遵守すべき行動規範です。これが履行されない場合には、懲戒処分が行われることになります。一般的な内容のほかに、昨今必要となってきた内容として次のものがあります。

□会社業務と関係のないインターネットサイトの閲覧禁止
□会社や役員・従業員または取引先の、名誉または信用を毀損する行為の禁止(SNSへの投稿等)
□パワーハラスメントの禁止

特にパワハラについては、昨今で最も会社の責任が問われる事項となっています。

 

3.懲戒処分

懲戒処分は企業秩序や職場規律を乱した従業員に対して行われます。従業員にとって重大な不利益措置にあたるため、会社が懲戒権を行使するためには、あらかじめ就業規則に懲戒の種別(減給・出勤停止・降格・・・etc)とその理由(どのような行為が、その懲戒に該当しうるのか)が定められている必要があります。

つまり就業規則がない会社においては、職場ルールを守ろうとしない社員から始末書を取ることさえもできません。

 

4.退職金

労働者に対する退職金の支払いは必須ではなく、「うちの会社には退職金はありません」ということも可能です。しかし、退職金規程を作成して支払いを行う場合には、退職金は労働条件の一部となります。多くの裁判例でも「退職金は賃金の後払いである」とされているため、いざ退職金支払いのタイミングで「原資がないから払えません」ということは認められません。規定時の注意点は以下のとおりです。

*支払いの対象者において、非正規社員も対象となるような構成にしないこと。たとえば「従業員」の定義を記載しないまま、単に「従業員に支払いを行う」と定めている場合には、アルバイトやパートタイマーにも支払わざるを得なくなる可能性があります。
「退職日から2ヶ月以内の支払いとする」など、支払いの期日を定める。この定めが無いと、労働者の請求が行われた日から7日以内に支払う必要があります。

 

20年ほど前ですが「就業規則なんかがあると、従業員に権利の主張ばっかりされそうだから、そんなのはいらない」あるいは「規則は作ったけれども、従業員には見せていない」という経営者の方にお目にかかったことがあります。開示していない就業規則に何が書いてあろうが、それに基づいて職場秩序を守らせることができないのはもちろん、懲戒処分をすることもできません。(「従業員に見せていなくても、監督署に届出しているのだから効力があるはず」と思われがちですが、監督署への届出と規則の効力は全く関係ありません)

就業規則の届け出義務が発生するのは「常時10人以上の労働者を使用する場合」となっていますが、「会社を護る」という観点ではその人数にとらわれる必要はまったくありません。会社が本来重要な営業活動にエネルギーを注いでいくためにも、余計な労務トラブルを予防してくれるツールである就業規則を作成すること、またそれを常に従業員に開示しておくことは非常に意義のあることだと言えます。

 

企業の経営者・担当者さま

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高澤 留美子(たかさわるみこ)のイメージ

執筆者

社会保険労務士法人アールワン 高澤 留美子(たかさわるみこ)
社会保険労務士事務所を開設して、歳月がたちました。最初の事務所は自宅の子ども部屋でした。お客様と本音でつながっている「パートナー」になれるよう、日々研鑽しています。モットーは「人間万事塞翁が馬」です。