知っていれば、こじらせない「クレームの聴き方」
2024/09/15
こんにちは。東京都の社会保険労務士法人アールワンの中村(なかむら)です。私が通っているネイルサロンでは、施術中の顧客から見える位置に、カスハラ対策の企業ポリシーを貼っています。ネイリストさんに尋ねると「不当な要求は減ったように思う」とのことで、貼り紙で抑止できているようでした。
「カスハラ」は、社会通念上、逸脱した不当な請求や要求で、従業員の方々に大きな精神的負荷を与える行動です。一方、「クレーム」は、不満や苦情でも、業務改善やサービス開発に繋がるものです。両者はまったく異なります。
法律では企業に「カスハラ対応措置」は義務付けていませんが、事前に対策ができていれば、こじらせず通常のクレーム対応で済みます。今回はカスハラ対策として「クレームの聴き方」をお伝えします。
「あなたの話を理解したい」という姿勢を全身で伝える
企業でカスハラ対策が1つでも実施できていると、クレームを受けた従業員が、対応の可否を明確に説明するなど、不満を大きくせず対応できる確率は8.8%アップするという結果も出ています。(日本労働組合総連合会「カスタマー・ハラスメントに関する調査2022」より)
ネガティブな感情を持つ顧客の話を聴くのは辛く苦しい時間ですが、どのような言葉も一旦「受けとめる」必要があります。ここでの「受けとめ」とは、顧客の言い分を「理解する」ということで「受け入れる」や「認める」ではありません。謝罪することでもありません。
具体的には、
①相手の話を遮らない
②反論をしない
③相手の目を見て、柔らかめの表情で大きく頷き、少し低い声のトーンで「ええ」「はい」と相槌をうつ
④相手の言い分に対して「そうなんですね」「そうだったんですね」「~ということは理解しました」と、受けとめたことを伝える
クレームの初期対応は、その後の関係性に大きく影響します。このような姿勢であれば、顧客は「ないがしろにせずに、聴いてもらえた」と思え、企業の誠実さが伝わります。次の段階として、落胆や傷ついた気持ちにさせたことに対して「限定的謝罪」をしたうえで、自社の状況を正直に伝え、理解をしていただけるよう対話を進めてください。正直な説明は信頼関係も構築できます。
「お客様も従業員も大切に」という風土が社会の共感を得られる
日本の企業風土には「お客様は神様」という精神が根付いており、高品質サービスが当たり前になっています。消費者の期待値も上がり、期待が外れると不満を感じます。さらに、顧客の不満はSNSで瞬時に拡散され、企業イメージも口コミに左右されてしまいます。
不当な要求に、繰り返し対応する従業員が精神障害を患うケースが多発している現状を受け、「労災認定基準」に「顧客や取引先、施設利用者等からの著しい迷惑行為」が追加されました。
不当な要求には応えられないことを説明し、理解してもらうことが、社会トレンドの「互いの尊重」であり、人々の共感が得られる姿勢です。「倫理観」や「公序良俗」などの現代の価値観からも、不当要求への企業ポリシー掲示は当然で「社員を守る」姿勢でもあります。企業ポリシーを明確にすることで、社員は安心して働け、人材流出も防げます。
この数年で、企業の「社員を大切にする」という意識も高まってきました。「お客様は神様」と崇め奉らず、自社に落ち度が無ければ、双方の言い分を伝え合い、理解し合い、折り合いをつけていく関係に変わりつつあるように思います。
アールワンでは、カスハラ対策に関するご相談や、従業員様への研修も承っています。お困り事があればお問い合わせください。
社会保険労務士法人アールワン 中村 智子(なかむらともこ)
電機メーカーに2社勤務後、ハローワークで人材確保・社員定着を支援していました。
キャリアコンサルタント、産業カウンセラー、メンタルヘルス関連の資格も取得しています。弊社のメンタルヘルス・ハラスメント・コミュニケーション研修を担当しており、社員の皆様が「活き活き働ける職場」を共につくりたく思います。一念発起し、禁酒ダイエット中です。
140社の人事労務をサポートする、東京都千代田区の社会保険労務士法人アールワンが提供。人事労務ご担当者の方の実務に役立つ情報をお届けします。
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