アールワン日誌 Blog

【年金改正法案2025】

2025/08/01

【年金改正法案2025】 - 社会保険労務士法人アールワン | 東京都千代田区

こんにちは。東京都の社会保険労務士法人アールワンの小林(こばやし)です。先日娘が5歳になりました。あと1年半で小学生になるのですが最近は字の読み書きや計算にもどんどん興味を持って来ています。休みの日に勉強を教えるのが楽しみになっています。

今回は先日2025年5月16日に提出され6月13日に成立した年金制度改正法案について中身を確認していきます。

主な改正項目は、

1.被用者保険の適用拡大
2.在職老齢年金制度の見直し
3.遺族年金制度の見直し
4.厚生年金の標準報酬月額の上限の段階的引上げ
5.将来の基礎年金の給付水準の底上げ
6.私的年金制度

になります。

企業の経営者・担当者さま

「もっと詳しく知りたい」「今この件で困っている」そのようなときには、こちらよりご連絡ください。

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■制度改正法案の内容について■

1.被用者保険の適用拡大

短時間労働者の適用要件を改正
【撤廃】 ①賃金が月額8.8万円(年収106万円相当)以上
②週所定労働時間が20時間以上
③学生は適用除外
【段階的に撤廃】 ④51人以上の企業が適用対象

改正のねらいとしては、加入要件をシンプルにする事によって社会保険に入りやすくする事です。

企業規模要件を2027年10月1日から2035年10月1日までの間に段階的に撤廃するという事になりました。個人事業所の適用対象の拡大に関しては常時5人以上を使用する個人事業所の非適用業種を解消し全ての事業所を被用者保険の適用事業所とする事になりました。

 

2.在職老齢年金制度の見直し

在職老齢年金とは60歳以降も老齢厚生年金を受け取りつつ働く場合、老齢厚生年金の月額と月給・賞与の合計額が51万円(2025年度)を超えるとその分年金額が減額される仕組みの事です。今回の改正では2026年度から支給停止調整額を62万円に引上げる事になりました。

賃金と年金の合計額が月62万円を下回る限り年金をフルに受給出来る事になるので高齢化社会が進むなか今までより働きやすい環境となります。

 

3.遺族年金の見直し

(遺族厚生年金における支給要件や給付内容を改正)
①男女ともに受給しやすくし、原則5年の有期給付に
②低所得など配慮が必要な方は最長65歳まで所得に応じた給付の継続
③有期給付の場合の加算や配偶者の加入記録による自身の年金の増額
④女性のみの加算を廃止(25年かけて段階的に縮小)
※既に受給権を有する方、60歳以降の高齢の方、20代から50代の18歳未満の子のある方には現行制度の給付内容を維持。

(遺族基礎年金における支給要件を改正)
子に対する遺族基礎年金が、子供自らの選択によらない事情により支給停止されないようにする。

今回の改正では性別による格差の是正という観点から60歳未満の夫でも一定の要件を満たせば受給出来る様になったので男女間の不公正が是正されたと言えるでしょう。

 

4.厚生年金保険の標準報酬月額上限額の引き上げ

現状は保険料と給付の算定に用いる標準報酬月額の上限を超える収入の方は、実際の賃金に占める保険料の割合が他の方よりも低くなっています。現行の標準報酬月額の上限の65万円を2027年9月から68万円、2028年9月から71万円、2029年9月から75万円と3年間にわたり段階的に引上げます。

今回の改正で標準報酬月額が段階的に引き上げられることになり、より高所得の方にも相応の保険料を納めてもらいつつ本人が将来的に受け取れる年金の額も増えることから年金制度全体の持続性及び安定性が高まる事が期待されます。

 

5.私的年金制度の見直し(iDeCoの加入可能年齢の引上げ)

現在の要件に加え、公的年金への保険料を納めつつ上乗せとしての私的年金に加入してきた方が60歳から70歳にかけて引き続き老後の資産形成を継続出来る様にするため、60歳以上70歳未満のiDeCoを活用した老後の資産形成を継続しようとする方であって、老齢基礎年金やiDeCoの老齢給付金を受給していない者にiDeCoの加入・継続拠出を認められる事になりました。

これまでは個人型確定拠出年金iDeCoの加入は60歳未満までに限定されておりそれ以降の年齢層の方には掛金を拠出して積み立てするという選択肢がありませんでした。しかしこの改正によって60歳以降の方でも69歳まで老齢給付金をまだ受給していない場合にはiDeCoへの加入を継続したり新たに開始出来たりする様になりました。

 

今回の年金制度改革では今後の働き方を多様化するための改革で、これからの高齢化社会・人生100年時代を踏まえた内容となっています。被用者保険の適用拡大、公的年金や私的年金制度の見直し、ご自身の年齢や家族構成や収入等によって選択肢が変わってきます。

今後もどんどん環境は変化して行きますのであらゆる変化に対応出来る様に正確な情報を仕入れる事がとても大切になります。

 

企業の経営者・担当者さま

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小林 正樹(こばやしまさき)のイメージ

執筆者

社会保険労務士法人アールワン 小林 正樹(こばやしまさき)
学習塾勤務を経て、2025年1月にアールワンへ入社しました。社会保険労務士試験には前職時代に2度目の挑戦で合格。労務・年金相談の分野で特にお力になれるよう知識を磨いています。休日は娘と遊ぶのが楽しみで、日課は晩酌です。家庭円満のため、妻の話をよく聞き、共感することを心がけています。