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もしも従業員が逮捕されたら・・・会社はどのような判断を下すべきでしょうか?

もしも従業員が逮捕されたら・・・会社はどのような判断を下すべきでしょうか? - 社会保険労務士事務所オフィスアールワン | 東京都千代田区

こんにちは。東京都の社会保険労務士事務所オフィスアールワンの西嶋(にしじま)です。先日、神奈川の三浦海岸まで行き、マグロを食べてきました。新鮮な魚の美味しさはやはり格別ですね・・・!

さて、もしもある日「従業員が逮捕された」と会社に連絡があったとします。突然の事態に戸惑うことと思いますが、そのようなときこそ会社側にも慎重な対応が求められます。(間違えても、逮捕された従業員を安易に解雇してはいけません)

今回は、従業員が業務外で犯罪行為を行って逮捕(身柄拘束)されたときの会社の対応についてお伝えします。

 

逮捕された場合の手続きの流れ

罪を犯した疑いによって逮捕・勾留された場合には、一般的に刑事手続きによって処理されることとなり、一定期間身柄が拘束されます。

①逮捕(警察での取り調べ)→②送検(検察での取り調べ)→③勾留請求(身柄を拘束したままの最長10日の捜査)→④勾留延長(さらに最長10日の延長)

この①~④まで発生すると最大で23日間拘束されます。犯罪の嫌疑が無い場合や、捜査継続中でも逃亡の恐れが無い場合には釈放されます。その後に起訴・不起訴が決まり、裁判で判決が確定します。

 

会社に求められる対応は

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さて、「従業員の逮捕=即懲戒解雇」と考えられる人も多いと思いますが、安易な判断は逆に会社のリスクが高くなるといえます。そのため、従業員の処分は状況を把握したうえで慎重に検討してください。

情報収集
「従業員がどんな理由で逮捕されたのか」また「本人が犯行を認めているのか」といった事実関係を把握してください。身柄の拘束中には、弁護士以外は本人と会うことができません。弁護士を通じて情報収集をするか、家族が事情を知っていれば家族からの情報収集が必要です。

従業員の勤怠の取扱いについて
身柄拘束中は会社に出勤ができませんので、勤怠は欠勤として扱います。その際、本人から弁護士や家族などを通じて有給休暇の申請があれば、有給休暇が適用となります。

社員からの退職の意思表示があれば
判決が確定する前に、従業員から退職の意思表示がされる場合には、通常通りの退職手続きを取ることとなります。本人が身柄拘束中の場合には、弁護士を通して退職届や秘密保持誓約書等を作成してもらいます。退職の意思表示は口頭でも可能ですが、後に退職の意思の有無を巡るトラブルが生じることを避けるためにも必ず書面で取得してください。

懲戒処分の検討
最終的な懲戒処分については有罪判決が確定し、本人の弁明を聴いたうえでの判断が必要です。(「会社の評価を著しく低下させる重大な犯罪行為の嫌疑が濃厚」といった場合には、判決前の処分が認められる場合があります)ただし、解雇については常習性がある場合や会社の信用問題に直結する、または懲役によって長期にわたって労務の提供ができないといった場合でなければ、有効とは認められません。

また、解雇には次の2つのケースがあります。

「懲戒解雇」 会社が従業員の責めに帰すべき理由で解雇すること。
「諭旨解雇」 従業員が重大な規律違反を行った場合に、対象者に退職届の提出を促して退職してもらうこと。(ただし、法的な定義はなく、懲戒解雇の温情的措置として実施されることがあるものです)

 

会社の解雇処分が有効・無効とみなされた裁判例

それでは実際に、犯罪行為をもとに従業員を解雇したものの、その解雇の有効性について従業員から訴えられた会社の裁判例を見てみましょう。

 

□解雇が「有効」となった裁判例

セールスドライバーの従業員が、業務終了後に飲酒したうえで自家用車を運転。酒気帯び運転で検挙されたが会社には報告しなかった。のちに酒気帯び運転が発覚したため、会社が懲戒解雇した裁判例。<ヤマト運輸事件/東京地裁/平成19年8月27日判決>

 

セールスドライバーという立場上、今回の違反行為が会社の社会的評価の低下に結びつき、企業の円滑な運営に支障をきたすという判断のもと、「懲戒解雇は有効」という判決が下されました。※解雇は有効とされたものの、退職金の約3分の1の支払が会社に命じられました。

 

□解雇が「無効」となった裁判例

電車内で痴漢をして、略式命令(罰金20万円の判決)を受けた従業員を会社が諭旨解雇した裁判例。<東京メトロ事件/東京地裁/平成27年12月25日判決>

 

判決は「行為の具体的状況から悪質性は比較的低い」と指摘。会社が社員の痴漢への懲戒処分で、起訴(略式起訴)だけを基準とし、その悪質性や処分歴(前科なし)、日頃の勤務態度などを考慮しないのは「処分の決め方として不合理にすぎる」となり、「諭旨解雇は無効」となりました。

 

この2つの裁判例からもわかるように、会社の懲戒処分の判断が妥当であるかどうかは、本人の状況や会社の事業内容、また犯罪の性質などから総合的に判断されるものであり、「犯罪を犯したから」という表面的な事象だけで判断できるものではありません。慎重に検討・判断することで、会社の処分が無効とみなされるリスクを回避する必要があります。

また、従業員が逮捕された場合には、長期にわたって出社ができないことについて、社内や(営業職の場合などは)顧客先にどのように説明するかも問題となります。刑事事件であれば、証拠が十分でない場合には無罪となるケースもあります。報道等がされていない限りは、社内については直属の上司や同じ部署の人のみの伝達にとどめつつ、顧客先への開示は控えるなど、こちらも慎重な対応が求められます。

 

西嶋 一樹(にしじまかずき)のイメージ

執筆者

社会保険労務士事務所オフィスアールワン 西嶋 一樹(にしじまかずき)
サッカーと水泳が好きな33歳です。 担当しているクライアントのほとんどが100人未満の中小規模の会社様ですので、大企業とは異なるスタイルでの人事労務のリスクマネジメントに腐心しています。最近はマイナンバー対応に注力しており、得意分野といえるようになってきました。 いつの日かサッカーの本場イングランドでサッカー観戦がしたいと思っています。

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