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社員の有給消化が進まない?「計画的付与」の活用をおすすめします。

2017/10/10

社員の有給消化が進まない?「計画的付与」の活用をおすすめします。 - 社会保険労務士法人アールワン | 東京都千代田区

こんにちは。東京都の社会保険労務士法人アールワンの笹沼(ささぬま)です。最近は、昔懐かしい少年マンガを読むことにはまっています。久しぶりのスポ根やバトルもののマンガに学生時代を思い出し、ついつい休日を心待ちにしてしまう今日このごろです。

さて昨今では、政府が提唱する「働き方改革」の一貫として休暇の取得が促されています。現在は多くの企業において有給休暇の取得率が低いことから、「年間5日以上の取得」を義務付ける法案も検討されているとのことです。

そのような状況のなか、「年次有給休暇の計画的付与」について私たちの事務所へのお問い合わせも増えてきています。そこで今回は、従業員の有給取得率を高めるための「計画的付与」についてそのポイントをご説明します。

 

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「年次有給休暇の計画的付与」とは?

計画的付与は、労働基準法第39条において次のように定められています。

「労働者の過半数を代表する者との書面による協定により、有給休暇を与える時季に関する定めをしたときは、有給休暇の日数のうち5日を超える部分については、前項の規定にかかわらず、その定めにより有給休暇を与えることができる。」

※「5日を超える部分について」というポイントについては後ほど説明します。

本来であれば、有給休暇は労働者の意思によって使用することができるものであり、会社が「◯月◯日に有給を使って休みなさい」と時季を指定することはできません。

ただし、労使協定による会社と従業員の合意があれば「有給休暇のうち一定の日数について、会社が時期を指定して使用させる」ことができます。その制度を「計画的付与」と呼びます。これにより、たとえば「◯月◯日は全社一斉で休日とするが、その日は有給休暇を取得したものとみなす」といったことが可能になります。

 

計画的付与の実施パターンは?

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当然ですが、事業所が一つだけの会社もあれば、全国に拠点がある会社もあり、会社ごとの状況はさまざまです。「特定の日に会社全体を休みにしてしまうと事業に影響が出てしまう・・・」という会社も多いことでしょう。

そこで計画的付与は、部署や時期などにより対象者を選定することが可能となっています。そのため、取得の方法には以下のようなパターンが考えられます。

①  会社全体を休業にする<一斉付与方式>
会社全体を休業として、全員を対象者とする方式です。例えば、まだ従業員数が少なく、拠点が本社一つしか無い(支店等が無い)といった場合などは可能かもしれません。

②班別に休業する<交代制付与方式>
①の全社一斉の休業が難しい場合には、拠点ごとや部署ごとに計画的付与の時季をずらすことができます。例えば「A支店は10月20日を休業とし、B支店は10月30日を休業とする」といったことが考えられます。

③年次有給休暇付与計画表による<個人別付与形式>
②の拠点全体や部署全体の休業も難しく、誰かが出勤していないと業務に支障が出るなどといった場合には、「AさんとBさんは10月20日、CさんとDさんは10月30日を休業」のように個別に付与することも可能です。

 

有給の残日数が少ない社員がいる場合は?

労使協定を締結することで実現する「計画的付与」ですが、これができるのは個人が取得できる有給休暇のうち「5日を超える部分について」のみです。これは計画的付与によって、「個人が自由に使える有給の残日数」が5日を割ってはいけないということです。

そうすると、あらかじめ決められた計画的付与を実施するタイミングにおいて「すでに有給休暇を多く利用しているなどにより、残日数が不足している」という従業員がいる場合があります。

そのような場合の会社の対応としては、以下の3つのパターンが考えられます。

①計画的付与の対象外とする
その従業員は、通常通り出勤させます。個人の有給の残日数によって都度、計画的付与の対象外とすることに問題はありません。

②不足する日数分の特別休暇を与える
例えば、「計画的付与として3日を予定している企業で、有給休暇の残日数が6日の社員Aがいる」というケースを考えます。計画的付与は5日を超える日数しか使用できないため、社員Aは3日の計画的付与のうち、有給休暇を1日しか使用することができません。そこで不足した2日分は特別休暇として付与するということが考えられます(これにより、有給休暇の残日数は5日となります)。

③計画的付与の対象外とするが、会社を休業させる
通常の労働日としますが、会社が強制的に休業させます(有給休暇は取得しません)。ただし、この場合、会社はその従業員の平均賃金の60%の支払が必要となります。(したがって、この③を選ぶ必要があるケースは稀です)

 

長時間労働が起きやすい会社ほど、有給消化率も低い傾向になりやすく、社員の健康障害といった大きなリスクにつながりがちです。しかし、「会社から有給を取得しろと言われても、休みにくい」「従業員に有給の取得を促しても、なかなか休んでくれない」という声は、多くの会社において聞かれるものです。この計画的付与を導入することができれば、そのような状況を改善するきっかけとなるでしょう。

十分な休暇が取得できる環境は、身体の休息や業務の効率化にもつながります。また昨今では、「休暇が取得しやすい風土」は労働者から選ばれるための一つの要件とも言え、人材の獲得や定着の効果も期待されます。

計画的付与の導入には、就業規則の改定や労使協定の締結が必須となります。導入を検討される場合には、ぜひ一度ご相談ください。

 

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笹沼 瞬(ささぬましゅん)のイメージ

執筆者

社会保険労務士法人アールワン 笹沼 瞬(ささぬましゅん)
生命保険会社の営業職から転じて、入社12年目。担当クライアントの多くが社員100名以上の規模の会社様ということもあり、法改正の情報は特に早めにキャッチアップすることを心がけています。得意な分野の助成金・補助金申請はずいぶんと経験値が増えてきました。趣味でテニス(週1回目標!)をやっていますので、テニスやられる方はぜひお声かけください。