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副業・兼業をした場合の時間外労働はどのように考えるべき?副業・兼業時の注意点

2020/08/20

副業・兼業をした場合の時間外労働はどのように考えるべき?副業・兼業時の注意点 - 社会保険労務士法人アールワン | 東京都千代田区

こんにちは。東京都の社会保険労務士法人アールワンの笹沼(ささぬま)です。最近、家の中でできる筋トレにはまっています。ちょっとした時間をみつけて腹筋やスクワットをしているのですが、運動した分、食事やアルコールの量が増えてしまっています・・・。

コロナウイルスの影響から休業(もしくは短時間休業)することとなり、収入減をカバーするために副業・兼業を認める企業が増えてきました。厚生労働省では、「働き方改革実行計画」(平成29年3月28日 働き方改革実現会議決定)を踏まえ、副業・兼業の普及を促していましたが、意図しない形で副業・兼業をする方が増えてきました。

そこで、今回は副業・兼業をした場合の時間外労働の注意点について、お知らせします。

 

企業の経営者・担当者さま

「もっと詳しく知りたい」「今この件で困っている」そのようなときには、こちらよりご連絡ください。

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【副業・兼業時の労働時間の考え方】とは

労働基準法第 38 条では「労働時間は、事業場を異にする場合においても、労働時間に関する規定の適用については通算する。」と規定されており、「事業場を異にする場合」とは事業主を異にする場合をも含む、とされています。(労働基準局長通達(昭和 23 年5月14 日基発第 769 号)) 

そのため、本業だけではなく、副業・兼業先の労働時間も通算して管理する必要があります。

ただし、副業・兼業先での働き方が、労働基準法が適用されない「代表取締役(役員)」「業務委託」といった働き方の場合は対象外となります。

 

【時間外労働の考え方】とは

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(1)割増賃金の支払い義務について

例1:後から労働契約を締結した事業者に対し、割増賃金の支払い義務が発生する場合
A事業者で「所定労働時間8時間」とする労働契約を締結している労働者がB事業者と新たに「所定労働時間3時間」とする労働契約を締結

A事業者:8時間 ⇒ 法定労働時間の8時間以内のため割増賃金の支払いは不要
B事業者:3時間 ⇒ A事業者ですでに法定労働時間の8時間を働いているため、B事業者での3時間労働に対し、割増賃金(1.25)の支払いが必要

 

例2:先に労働契約を締結していた事業者に対し、割増賃金の支払い義務が発生する場合
A事業者で「所定労働時間4時間」とする労働契約を締結している労働者がB事業者と新たに「所定労働時間4時間」とする労働契約を締結。A事業者での労働時間が延びて5時間労働した場合

A事業者:5時間 ⇒ B事業者との労働時間の通算が9時間となり法定労働時間を超過した1時間分に対し、割増賃金(1.25)の支払いが必要
B事業者:4時間 ⇒ A事業者との所定労働時間の通算は8時間となり、法定労働時間内のため割増賃金の支払いは不要

 

「後から労働契約を締結した事業者が割増賃金の支払い義務がある」と思われることが多いのですが、上記例のように労働契約の内容によっては、先に労働契約を締結した事業者であっても割増賃金の支払い義務が発生することになってしまいます。

 

(2)36協定について

副業・兼業先での労働時間を通算した結果、36協定に影響する可能性があります。

例:事業者で「所定労働時間8時間」とする労働契約を締結している労働者がB事業者と新たに「所定労働時間3時間」とする労働契約を締結。月の所定労働日数20日の場合

A事業者:8時間×20日=160時間(時間外労働発生無し)
B事業者:3時間×20日= 60時間(時間外労働発生あり)

⇒B事業者においては60時間の時間外労働が発生したことになり、1か月の上限である45時間を超えていることになります。この場合、B事業者は36協定違反となってしまうため、特別条項を締結する必要があります。

 

労働時間を把握しないと、知らないうちに時間外労働の割増賃金の未払いや36協定の上限規制に抵触する場合があります。このようなことから、副業する際には「いつ、どこで(どんな業種)、どの程度(週○日、1日○日)」働くのかを社員から報告してもらう必要があります。また、長時間労働は健康障害を引き起こす可能性がありますので、副業を制限しなければなりません。

もし仮に私が経営者の立場で決定するならば、労働基準法が適用されない「代表取締役(役員)」「業務委託」といった働き方のみ、副業・兼業を許可するでしょう。もちろん実態として指示命令を受けない働き方である、ことが前提となります。副業・兼業する場合の運用について、不明な点がございましたら是非ご相談ください。

 

企業の経営者・担当者さま

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笹沼 瞬(ささぬましゅん)のイメージ

執筆者

社会保険労務士法人アールワン 笹沼 瞬(ささぬましゅん)
生命保険会社の営業職から転じて、入社12年目。担当クライアントの多くが社員100名以上の規模の会社様ということもあり、法改正の情報は特に早めにキャッチアップすることを心がけています。得意な分野の助成金・補助金申請はずいぶんと経験値が増えてきました。趣味でテニス(週1回目標!)をやっていますので、テニスやられる方はぜひお声かけください。