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新しい「介護離職防止支援助成金」は、受給のハードルが上がっているのでご注意を。

2016/11/30

新しい「介護離職防止支援助成金」は、受給のハードルが上がっているのでご注意を。 - 社会保険労務士法人アールワン | 東京都千代田区

こんにちは。東京都千代田区の社会保険労務士法人アールワンの高澤(たかさわ)です。

現在では家族の介護を理由として会社を離職する人の数は年間約10万人にのぼるとされています。また、平成37年には団塊世代が75歳を迎えることから、「介護離職者」の数は今後ますます増加していくことが予想されています。

そこで、介護離職者を減らすために平成29年1月1日から育児・介護休業法の改正が行われることは以前にこちらの記事でも紹介しました。そして、それにともないスタートしたばかりであった「介護支援取組助成金」が「介護離職防止支援助成金」へと内容を変更することになりました。

これは具体的にどのような助成金なのか?以前の助成金との違いは?今回は「介護離職防止支援助成金」のポイントをご紹介します。

 

企業の経営者・担当者さま

「もっと詳しく知りたい」「今この件で困っている」そのようなときには、こちらよりご連絡ください。

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大きな変更点は、受給要件が「追加」されたことです

新しい助成金の前身である「介護支援取組助成金」は、平成28年4月にスタートしたばかりで「従業員の仕事と介護の両立について取組を行なった」事業主に支給される助成金でした。

その特徴は「企業が取組を行なったこと」に対して助成金が支給される、ということで「実際に従業員が介護休業を取得した」という実績は、全く必要とされませんでした。

しかし、平成28年10月19日に「介護離職防止支援助成金」に変更された際に

「実際に介護に直面した従業員が発生したときに、会社が支援を行ない、その従業員が介護休業を取得して復帰した、あるいは時差出勤などの介護制度を利用した」

という点も求められるようになりました。

つまり、以前の助成金は《取組》だけで助成金が受給できましたが、新しい助成金ではそれに加えて《実際に対象者が発生すること》と《制度を利用した実績》までが必要とされます。企業にとっての受給のハードルは高くなったといえるでしょう。

 

助成金を受給するまでに必要な2つのステップ

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この助成金を受給するために企業に求められるアクションは「事前の準備」と「対象者が発生した際の取組」の大きく2つに分かれます。

 

◇ステップ1 事前の準備

介護に直面する従業員が発生する前に、会社として取り組む必要がある事項です。これは、前身の「介護支援取組助成金」の取組と内容は同一ですので、こちらの記事の「助成金を受け取るための3つの取組」という項目をご覧ください。
※以前の助成金は、このステップ1のみが受給要件でした。

◇ステップ2 対象者が発生した際の取組

そして、今回の助成金で新たに必要となったアクションが、この実際に対象者が発生した後の取組です。

ここで会社に求められるのは、「介護支援プラン」の作成です。これは、会社が対象者との面談を通じて、「介護休業や時差出勤などの制度利用に関する希望」や「直面している課題」「業務内外で配慮すべき事柄」などを確認したうえで作成する、仕事と介護の両立実現に向けた計画書となります。

※計画書の参考フォーマットはこちらです。

そして、このプランは、全社共通の指針ではなく、あくまでも対象者個人に合わせて個別に作成される必要がある点に注意してください。

 

さらに、介護支援プランによる介護休業の取得等の支援について、就業規則等に明文化し周知させる必要があります。その規定例として、厚生労働省からは次の条文が示されています。

第○条円滑な取得及び職場復帰支援

会社は、育児休業又は介護休業等の取得を希望する従業員に対して、円滑な取得及び職場復帰を支援するために、当該従業員ごとに育休復帰支援プラン又は介護支援プランを作成し、同プランに基づく措置を実施する。
なお、同プランに基づく措置は、業務の整理・引き継ぎに係る支援、育児休業又は介護休業中の職場に関する情報及び資料の提供など、育児休業又は介護休業等を取得する従業員との面談により把握したニーズを合わせて定め、これを実施する。

 

助成金の金額には2パターンがあります

これらの取組によって、企業が受給できる助成金はいくらになるのでしょうか?

これは、対象者が「介護休業を希望する」というケースと「介護制度の利用による働き方の変更を希望する」ケースとで、求められる取組み内容やその手順、そして助成金額に違いがあります。

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※助成金額は中小企業の場合の金額です。大企業の場合には、介護休業取得で40万円、介護制度利用で20万円の助成金となります。

助成金の申請期限は、取組の完了から2ヶ月以内となっています。また、1事業主で最大4回の受給申請ができます。介護休業取得と介護制度利用、それぞれ有期雇用者と無期雇用者を対象として申請が可能です。

 

介護離職は、40~50歳代といった企業の中核を担う世代において最も多くなっているのが実状です。また、近年の家族形態の変化によって、孫世代が介護を行うといったケースも増えています。会社にとって貴重な人材が失われるということを防ぐためにも、今回の助成金を活用しながら、介護離職を防止するための取り組みをぜひ検討してみてはいかがでしょうか。

 

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高澤 留美子(たかさわるみこ)のイメージ

執筆者

社会保険労務士法人アールワン 高澤 留美子(たかさわるみこ)
社会保険労務士事務所を開設して、歳月がたちました。最初の事務所は自宅の子ども部屋でした。お客様と本音でつながっている「パートナー」になれるよう、日々研鑽しています。モットーは「人間万事塞翁が馬」です。